近年、人気のVRSNS「VRChat」について、サービス終了の噂が囁かれるようになりました。突然のレイオフ発表などをきっかけに、VRChatはもうオワコンではないかと心配する声も上がっています。
大切なコミュニティや思い出の場所がなくなってしまうのではないかと、不安に感じている方も少なくないでしょう。
この記事では、VRChatのサービス終了という噂がなぜ広まったのか、その根拠を客観的な情報と共に解説します。あわせて、サービスの継続性やVRSNS市場の未来についても深く掘り下げていきます。
- VRChatサービス終了説が流れる具体的な理由
- データに基づいたVRChatの現状と将来性
- 他のVRSNSプラットフォームとの比較とVRChatの強み
- ユーザーとしてVRChatを応援するためにできること
VRChatサービス終了の噂が広まる背景
- 従業員30%レイオフが憶測を呼んだ
- 不透明な財務状況に対するユーザーの不安
- VRChatは本当にオワコンなのか?
- Steam Chartsが示すユーザー数の推移
- グローバル市場におけるVRChatの優位性
従業員30%レイオフが憶測を呼んだ
VRChatのサービス終了説が広まる直接的なきっかけとなったのは、2024年6月に運営会社であるVRChat社が全従業員の約30%にあたる人員削減(レイオフ)を発表したことです。
— VRChat (@VRChat) June 12, 2024
このニュースは多くのユーザーに衝撃を与え、経営が悪化しており、サービス終了へのカウントダウンが始まったのではないかという憶測を呼びました。
しかし、VRChat社のCEOが従業員へ向けて公開した手紙によると、このレイオフは経営悪化によるものではなく、将来的な成長を見据えた組織再編の一環であると説明されています。
コロナ禍での急成長期に過剰に増えた人員を適正化し、管理職の層を厚くすることで、より効率的で健全な経営体制を構築することが目的です。
つまり、人員削減はサービスを畳むための準備ではなく、むしろ今後5年、10年とサービスを継続していくための「筋肉質な組織」への変革と考えることができます。
もちろん、人員が減ることで開発ペースへの影響を懸念する声もありますが、企業としては長期的な存続を最優先した結果の判断と言えるでしょう。
不透明な財務状況に対するユーザーの不安
サービス終了説を助長しているもう一つの要因として、VRChat社の財務状況が不透明であることが挙げられます。
VRChat社は非上場企業であり、詳細な収益や資金繰りに関する情報が公開されていません。そのため、ユーザーからは「運営資金は大丈夫なのか」「どこから出資を受けているのか」といった不安の声が上がりやすい状況です。
一般的に、VRChat社はベンチャーキャピタルからの出資によって運営資金を賄っていると考えられています。事実、2021年には8000万ドル(当時のレートで約87億円)という大規模な資金調達に成功しています(参照:VRChatがAnthos Capitalと提携し、8000万ドルのシリーズD資金調達を完了)
ただ、ベンチャーキャピタルからの出資は将来的な利益の創出が前提となるため、収益化が思うように進まなければ、追加の支援が打ち切られるリスクもゼロではありません。
このように、運営の根幹に関わる情報がブラックボックス化していることが、些細なネガティブニュースでも「経営が危ないのではないか」という憶測に繋がりやすい土壌を作っているのです。
VRChatは本当にオワコンなのか?
レイオフの発表や財務状況の不透明さから「VRChatはもうオワコン(終わったコンテンツ)なのではないか」という声が一部で見られます。新しいVRSNSプラットフォームが登場する中で、VRChatの勢いが落ちていると感じる人もいるかもしれません。
一方で、客観的なデータを見ると、VRChatが今なお強力なプラットフォームであることは明らかです。特にユーザー数においては、他の追随を許さないほどの規模を誇っています。新しいワールドやアバター、イベントが日々ユーザーの手によって生み出されており、コンテンツの供給が途切れる気配はありません。
また、企業やアーティストとのコラボレーションイベントも頻繁に開催されており、プラットフォームとしての注目度の高さを示しています。
これらの事実から、一部の懸念とは裏腹に、VRChatのコミュニティや文化は依然として活気に満ちていると言えるでしょう。

オワコンと判断するのは、あまりにも早計だと考えられますね。
Steam Chartsが示すユーザー数の推移
VRChatの現状を客観的に把握するための重要な指標の一つに、PCゲームプラットフォーム「Steam」の公式統計データを提供する「Steam Charts」があります。このデータを見ると、VRChatの同時接続ユーザー数の推移を知ることができます。
データによれば、VRChatのユーザー数は特定のイベントや大型アップデートの時期に増減はあるものの、長期的に見ると安定した高い水準を維持しています。
特に年末年始や長期休暇のシーズンにはユーザー数が大きく増加する傾向が見られ、これは新規ユーザーの獲得と既存ユーザーの回帰が活発であることを示しています。
もしサービスが衰退期に入っているのであれば、ユーザー数は明確な右肩下がりを示すはずです。しかし、VRChatのデータはそのような傾向を見せておらず、むしろ巨大で安定したユーザーベースを確立していることが分かります。

この事実は、サービスが健全に運営されている強力な裏付けですね。
グローバル市場におけるVRChatの優位性
VRChatが持つ最大の強みの一つは、その圧倒的なグローバル展開力です。もともとアメリカで生まれたサービスということもあり、特定の国や地域に依存せず、世界中のユーザーに利用されています。
これにより、常にどこかの国の誰かがログインしている状態が生まれ、24時間365日、プラットフォームに活気をもたらしています。
世界中に広がるコミュニティ
VRChat内では、英語はもちろん、日本語、韓国語、スペイン語、ロシア語など、さまざまな言語のコミュニティが形成されています。これにより、ユーザーは自国の友人だけでなく、世界中の人々と交流する機会を得られます。この多様性が、VRChat独自の文化と魅力を生み出す源泉となっています。
プラットフォームとしての利便性
VRChatはPC(Steam)だけでなく、Meta QuestシリーズなどのスタンドアロンVRヘッドセットにも対応しており、幅広いユーザーがアクセスしやすい環境を整えています。
特に、世界最大のPCゲームプラットフォームであるSteamを通じて提供されている点は、新規ユーザーの獲得において非常に大きなアドバンテージです。このようなグローバルな視点でのプラットフォーム戦略が、VRChatの競争優位性を支えています。
VRChatサービス終了の可能性と今後の展望
- 日本産VRSNSとの決定的な違い
- VRChatの主な収益モデルとは何か
- ユーザーができるVRChat存続への貢献
- VRChat Plus加入が持つ重要性
- 運営の健全化に向けた企業の取り組み
日本産VRSNSとの決定的な違い
VRChatの将来性を考える上で、日本で人気の「cluster」や「VirtualCast」といったVRSNSプラットフォームとの比較は欠かせません。これらの国産プラットフォームは、日本のユーザーに向けた丁寧なローカライズやイベント運営に強みを持っています。
一方で、VRChatとの最も決定的な違いは、前述の通りグローバル市場への対応力です。VRChatが全世界をターゲットにしているのに対し、国産プラットフォームの主戦場は現時点では日本国内に限られています。これは、市場規模、つまり潜在的なユーザー数と収益源の大きさに直結します。
もちろん、日本市場に特化することで、きめ細やかなサービスが提供できるというメリットはあります。しかし、長期的なサービスの存続と発展を考えた場合、より大きな市場で収益を確保できるVRChatの方が、現時点では有利な立場にあると考えられます。
VRChatの主な収益モデルとは何か
VRChatがサービスを継続していくためには、安定した収益源の確保が不可欠です。現在、VRChatの主な収益モデルは、月額制の有料プラン「VRChat Plus」です。
VRChat Plusに加入すると、アバターのお気に入り登録数の増加、カスタムユーザーアイコンの設定、トラストランクの上昇率アップなど、さまざまな特典が受けられます。月額9.99ドル(または年額99.99ドル)という価格設定で、これがVRChat社にとって直接的かつ安定した収入源となっています。
ただし、VRChatの基本プレイは無料であり、多くのユーザーは課金せずにサービスを利用しています。そのため、VRChat Plusの加入者数をいかに増やしていくかが、今後の経営安定化の鍵となります。
また、VRChat社は将来的な収益の柱として「クリエイターエコノミー」の構築を進めています。これは、ユーザーが作成したアバターやアイテムなどをVRChatプラットフォーム内で安全に売買できる仕組みです。
この構想が実現すれば、クリエイターに新たな収益機会を提供すると同時に、VRChat社も取引手数料などを得ることで、収益源を多角化できると期待されています。
ユーザーができるVRChat存続への貢献
VRChatというプラットフォームを今後も楽しみたいと願うユーザーができる、最も直接的で効果的な貢献は、やはり有料プランである「VRChat Plus」に加入することです。ユーザーからの直接的な金銭的支援は、サーバーの維持費や開発スタッフの人件費となり、サービスの存続に直結します。
ただ、金銭的な支援だけが貢献のすべてではありません。VRChatの世界をより魅力的にし、コミュニティを活性化させることも、間接的にサービスを支える重要な行動です。
例えば、以下のような活動が挙げられます。
- ワールドやアバター、ギミックなどを作成し、公開する
- ユーザーイベントを企画・開催し、人々が集まる場を提供する
- 新規ユーザーを案内し、VRChatの楽しさを伝える
- SNSなどでVRChatの魅力を発信する
これらの活動によってプラットフォームの魅力が高まれば、新規ユーザーの増加や既存ユーザーの定着に繋がり、結果としてVRChat Plusの加入者増にも貢献する可能性があります。
一人ひとりのユーザーがVRChatを楽しみ、その世界を豊かにしていくことが、プラットフォーム全体の価値を高め、存続へとつながっていくのです。
VRChat Plus加入が持つ重要性
前述の通り、VRChat Plusへの加入はサービスを支える上で非常に大切です。ここでは、その重要性をもう少し深く掘り下げてみます。
多くの無料オンラインサービスは、広告収入や企業とのタイアップに収益を依存しています。しかし、VRChatは没入感を重視しており、現時点ではワールド内に強制的な広告表示などを導入していません。
この方針はユーザーにとって快適な環境を維持する一方で、運営会社の収益源を限定的にしてしまいます。VRChat Plusは、この課題を解決するための重要な仕組みです。
ユーザーが「月額料金を支払う価値がある」と感じるサービスを提供し、その対価として直接収益を得る。この健全なサイクルを確立することが、プラットフォームの長期的な安定に不可欠です。
VRChat Plusに加入するということは、単に便利な機能を手に入れるだけでなく「VRChatというプラットフォームの未来に投資する」という意思表示でもあります。
運営会社は加入者数という明確な指標を通じてユーザーの支持を実感でき、それが今後の開発へのモチベーションや、外部の投資家に対する信頼にも繋がると考えられます。
運営の健全化に向けた企業の取り組み
先述した従業員のレイオフは、短期的にはネガティブなニュースとして捉えられがちですが、長期的な視点で見れば、運営の健全化に向けた重要な一歩と評価できます。
VRChat社のCEOは、レイオフの理由として「管理職の不足」と「過剰な一般職の雇用」を挙げていました。これは、組織が急拡大する過程で、全体の方向性を定め、各チームを効率的に動かすためのマネジメント層の育成が追いつかなかったことを示唆しています。
今回の組織再編は、このいびつになった構造を是正し、意思決定のスピードを上げ、開発リソースをより重要なプロジェクトに集中させるためのものです。
痛みを伴う改革ではありますが、これによりVRChat社は、変化の激しいVRSNS市場で生き残るための、より強固で持続可能な組織体制を築こうとしているのです。このような企業の自己改革への取り組みは、サービスを本気で存続させようという意志の表れと見て良いでしょう。
VRChatサービス終了の噂は本当か?
- サービス終了説は2024年6月の従業員30%レイオフが主な発端
- レイオフの目的は経営悪化ではなく将来を見据えた組織の健全化
- VRChat社の財務状況は非公開でありユーザーの不安材料となっている
- しかしサービスがすぐに終了する可能性は極めて低いと考えられる
- Steamの統計データではユーザー数が長期的に安定していることが示されている
- 全世界にユーザーを持つグローバルなプラットフォームであることが最大の強み
- 国産VRSNSと比較して圧倒的な市場規模とユーザーの多様性を誇る
- VRChatがオワコンであるという見方は客観的データに即していない
- 現在の主な収益源は有料プランの「VRChat Plus」
- 将来的にはクリエイターエコノミーによる収益の多角化を目指している
- ユーザーができる最も直接的な支援はVRChat Plusへの加入
- コミュニティを活性化させることもプラットフォームへの重要な貢献となる
- Plusへの加入はVRChatの未来への投資という側面も持つ
- 運営会社は長期的な存続のため組織再編という厳しい判断を下した
- これらの点から総合的に判断すると現時点でサービス終了を過度に心配する必要はない