皆さんはVRChatで遊んでいて、有名なゲームの世界そのまんまのワールドを見かけたことはありませんか。
あのゲームの世界に入れたと感動する一方で、これって本当に大丈夫なのかなと不安に感じることもあるかもしれません。
実はそういったワールドの多くは、ぶっこ抜きと呼ばれる手法で作られている可能性があり、利用するだけでトラブルに巻き込まれるリスクも潜んでいます。
今回はそんなVRChatにおけるぶっこ抜きワールドについて、違法性や見分け方、そして自分の身を守るための対策について、私が調べた情報を分かりやすくまとめてみました。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的な助言を行うものではありません。具体的な法的判断が必要な場合は、専門家にご相談ください。
VRChatのぶっこ抜きワールドの違法性とリスク
「憧れのあのゲームの世界に行ける!」そんな夢のような体験ができるVRChatですが、その裏側には無視できないリスクが隠れていることがあります。
まずは、いわゆる「ぶっこ抜きワールド」がどのような問題を抱えているのか、法的な視点とアカウントの安全性の面から一緒に見ていきましょう。
VRChatにおける著作権侵害の真実
まず結論から言うと、市販のゲームや他人のデータを無断で抽出してVRChatにアップロードする行為は、日本の著作権法において非常にグレー、というより限りなく黒に近い行為だと言われています(参照:Copyright Act – Japanese – Japanese Law Translation)
「みんなやってるから大丈夫でしょ?」「ファン活動の一環じゃないの?」と思ってしまう気持ちも分かりますが、法律の世界では「私的利用」の範囲が厳格に定められています。
VRChatのパブリックワールドとして公開することは、不特定多数の人が利用できる状態にするわけですから、明らかに「私的利用」の範囲を超えていると考えられるんですね。
たとえ「非営利」であっても、権利者の許可なくデータを公開することは権利侵害にあたる可能性が高いです。
ぶっこ抜きが違法となる具体的ケース
では、具体的にどのような行為が法的に問題視されるのでしょうか。私が調べたところ、主に以下の3つの権利侵害が関わってくるようです。
複製権の侵害
ゲームのデータを自分のPCにコピーしたり、VRChatのサーバーにアップロードしたりする行為です。これだけでも「無断複製」にあたる可能性があります。
公衆送信権の侵害
これが一番大きな問題かもしれません。アップロードしたワールドを誰でも入れる状態(Public化)にすることは、著作物を公衆に送信可能な状態にする行為です。
同一性保持権の侵害
オリジナルのゲームの世界観とは関係のないアバターが入り込んだり、勝手に改変されたりすることは、著作者が意図しない形での利用となり、著作者人格権を侵害する恐れがあります。
アカウントBAN基準と規約上の扱い
法律の話は難しくても「VRChatのアカウントが消されるかもしれない」というのは怖いですよね。VRChatの利用規約(Terms of Service)では、著作権を侵害するコンテンツのアップロードは明確に禁止されています。
実際に、権利者からの申し立て(DMCA通報など)があった場合、運営は対象のワールドを削除し、アップロードしたユーザーに対してアカウント停止(BAN)などの措置を取ることがあります。
特に最近は企業側の監視も厳しくなっているようなので「今まで大丈夫だったから」という理屈は通用しないと考えておいた方が良さそうです。
任天堂や原神ワールドに潜む危険
検索でもよく見かける「任天堂」などの有名タイトルのワールド。これらは特に注意が必要です。
例えば任天堂は「ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」を公開していますが、これはあくまでプレイ動画の投稿などを想定したもので、ゲームのアセット(3Dモデルデータ)そのものを抽出して再利用することを許可しているわけではありません。
海外のユーザーが「ファンアートだ!」と言ってアップロードしているケースも多いですが、日本国内から利用する場合、日本の法律や企業のガイドラインに照らし合わせて慎重に判断する必要があります。

安易に写真を撮ってSNSにアップロードすると、思わぬ批判を浴びたり、トラブルに発展したりすることもあるので気をつけたいですね。
危険なワールドの確実な見分け方
「じゃあ、どうやって安全なワールドとそうでないワールドを見分ければいいの?」という方のために、私が普段気にしているチェックポイントをまとめてみました。
| チェック項目 | 危険度 | 解説 |
|---|---|---|
| ワールド名にゲームタイトル | 高 | 「Mario」などそのままの名前がついている場合は要注意です。 |
| 作者の過去作 | 中 | 同じ作者が多種多様なゲームのワールドばかりアップしている場合、常習者の可能性があります。 |
| 見た目は綺麗だがハリボテ | 中 | 建物の中に入れなかったり、裏側に回ると世界が消えたりする場合、ゲームの背景データをそのまま持ってきている可能性があります。 |
| 汎用アセットがない | 低 | Unityストアなどで売られている一般的な家具や植物が一切なく、全てがその作品専用のデザインである場合も疑わしいです。 |
特に「見た目のクオリティは凄まじいのに、ギミックが全く動かない(ドアが開かない等)」ワールドは、データだけを無理やり持ってきた可能性が高いです。
VRChatぶっこ抜きワールドの技術と対策
ここからは少し技術的なお話になります。なぜこういった「ぶっこ抜き」が可能なのか、そして私たちがクリエイターとして活動する際に、自分の作品をどう守ればいいのかについて考えてみましょう。
AssetRipperの使い方と抽出の手口
インターネット上で検索すると「AssetRipper」などのツール名が出てくることがあります。
これはUnity製のアセットバンドルからデータを復元するためのツールなのですが、悪意あるユーザーによって、VRChatのキャッシュデータからアバターやワールドデータを抽出するために悪用されることがあります。
仕組みとしては、私たちがワールドを読み込む際にPCに一時保存(キャッシュ)されるデータを解析し、Unityプロジェクトとして再構築しようとするものです。
ただ、これを実際に試すのは規約違反であり、法的なリスクも伴うため絶対にやめましょう。仕組みを知ることは防衛のために重要ですが、手を出してはいけない領域です。
アバター盗難防止と暗号化の限界
「自分の作ったアバターが盗まれるのは怖い」と考えるクリエイターさんも多いと思います。対策として「アバターの暗号化」や「メッシュスクランブル(頂点座標をぐちゃぐちゃにする技術)」といった手法が存在します。
例えば、Kanna Proteccのようなツールを使うと、データが盗まれても見た目が破綻した状態になるため、そのままでは使えないようにすることができます。これは現時点でかなり有効な対策の一つと言われています。
ただし、VRChatの仕組み上、最終的に画面に描画するためにはGPU(グラフィックボード)でデータを読み込む必要があります。そのため、高度な技術を持つ攻撃者に対して「100%完全に防ぐ」ことは理論上不可能だとも言われています。
クリエイターが実践すべき対策
完全な防御は難しくても、ハードルを上げることは可能です。私がおすすめする、クリエイターができる対策は以下の通りです。
- 公開範囲の限定: 信頼できるフレンド限定(Friends+など)で公開する。
- Udonギミックによる制御: ワールドの場合、特定のパスワードを入力しないと奥へ進めないようにしたり、不正な挙動を検知してリスポーンさせる仕組みを入れる。
- ウォーターマークの埋め込み: テクスチャの目立たない場所に自分の署名を入れておくことで、万が一流出した際に自分が作者であることを証明できるようにする。
Unityデコンパイルとキャッシュの仕組み
VRChatはUnityというゲームエンジンで作られていますが、Unityは「C#」という言語で動いています。
このプログラム部分は比較的解析がしやすいと言われており、専用のツールを使うと元のコードに近い形まで戻す(デコンパイル)ことができてしまうそうです。
ワールドに複雑なゲーム機能を組み込んでも、そのロジックを解析されてしまうリスクはゼロではありません。
大切なのは「クライアントサイド(ユーザーのPC)にあるデータは、いつか見られる可能性がある」という前提で、重要なデータはサーバー側で管理するなどの工夫が必要なのかもしれませんね。
VRChatぶっこ抜きワールドの総括
ここまで、VRChatにおけるぶっこ抜きワールドの現状とリスクについてお話ししてきました。技術の進化とともに、こうした問題は常に「いたちごっこ」の状態が続いています。
私たち一般ユーザーにできることは「怪しいワールドには近づかない」「安易に拡散しない」という自衛の意識を持つことです。
そして何より、正規の手順でアセットを購入したり、苦労してオリジナルのワールドを作っているクリエイターさんたちへのリスペクトを忘れないことが、VRChatの世界を健全に保つ一番の近道だと私は思います。

安全に楽しむためにも、公式のコラボワールドや、Boothなどで正規に販売・配布されているアセットを使ったオリジナルワールドで遊ぶことを強くおすすめします!

