VRChatのワールドで、友人たちと動画を観ようとした際に自分だけ再生されない、あるいは突然エラーが表示されて困惑した経験はありませんか。
昨日まで問題なく視聴できていたのに、なぜか動画プレーヤーが機能しなくなるトラブルは、多くのユーザーが直面する課題の一つです。
この記事では、VRChatで動画が再生されない問題について、その原因から具体的な解決策までを網羅的に解説していきます。
- すぐに試せる基本的なトラブルシューティング
- 多くのユーザーが直面するネットワーク問題の原因
- 根本的な解決に繋がる複数の具体的な対策手順
- 再発防止や他の選択肢に関する知識
VRChatで動画が再生されない問題の基本チェック
- まずは再生方法を確認しよう
- Windows側の基本確認から始める
- NVIDIAコントローラパネルの復元を試す
- youtube-dl.exeを最新に更新する方法
- ゲーム内からキャッシュクリアしよう
まずは再生方法を確認しよう
VRChatで動画が再生されない時、最初に確認すべきはゲーム内の設定です。見落としがちな基本的な項目として「信頼されていないURLを許可」の有効化が挙げられます。
これは、信頼されていないURLの読み込みを許可する設定で、無効になっていると多くの動画プレーヤーが正常に動作しないので、有効にする必要があります。
設定画面から「快適性とセーフティ」を選択し「信頼されていないURLを許可」のチェックボックスがオンになっているかを確認してください。もしチェックが外れていたら、クリックして有効にしましょう。
多くの場合、VRChatをインストールした初期の状態では、安全のためにこの設定が無効になっていることがあります。特に、最近VRChatを始めた方や、設定をリセットした後に問題が発生した方は、この点を確認することが解決への第一歩となります。
Windows側の基本確認から始める
ゲーム内の設定に問題がない場合、次はお使いのPC、つまりWindows側の環境を確認する必要があります。VRChatはPCの様々な要素と連携して動作するため、OSや関連ソフトウェアの状態が再生トラブルの原因になることがあるからです。
最初に、Windows Updateを実行し、お使いのOSが最新の状態であることを確認してください。VRChatは古いバージョンのWindowsに対応していない場合があり、セキュリティ更新プログラムなどが適用されていないと予期せぬ不具合を招くことがあります。
次に、グラフィックボードのドライバも最新版に更新しましょう。特にNVIDIAやAMDのGPUを使用している場合、ドライバのバージョンが古いと描画だけでなく、動画再生のようなマルチメディア機能にも影響を及ぼす可能性があります。各メーカーの公式サイトや専用ソフトウェアから最新のドライバをインストールしてください。
また、特定のソフトウェアがVRChatの動作を妨げているケースも報告されています。中でも「LogMeIn Hamachi」のような仮想プライベートネットワーク(VPN)ソフトは、VRChatの通信と競合し、動画再生を含む多くの機能で問題を引き起こすことが知られています。もしインストールされている場合は、一度アンインストールして状況が改善するか試す価値があります。
NVIDIAコントローラパネルの復元を試す
グラフィックドライバを更新しても状況が改善しない場合、NVIDIA製のGPUをお使いの方は「NVIDIAコントロールパネル」の設定が原因となっている可能性が考えられます。
ユーザーが意図せず変更した設定や、他のアプリケーションが自動で最適化した設定が、VRChatの動画再生機能に悪影響を与えているケースです。
このような場合、設定を初期状態に戻す「復元」機能が有効な解決策となることがあります。
①デスクトップ画面で右クリックし「その他のオプションを確認」→「NVIDIAコントロールパネル」をクリックします。
※初回起動時のみNVIDIA ソフトウェアの使用許諾契約書画面が表示されるので「 同意/続行 」 ボタンをクリックしてください。
②左側のメニューから「3D設定」の中にある「3D設定の管理」を選択。画面右側に表示される「グローバル設定」のタブが開いていることを確認し「復元」ボタンをクリックします。その後、右下にある「適用」ボタンを押して設定を反映させ、PCを再起動してください。
これにより、3D描画に関する設定がすべてデフォルト値に戻るため、個別の設定が引き起こしていた問題が解消される可能性があります。ただし、他のゲームなどで個別に設定を最適化している場合は、その設定もリセットされる点には注意が必要です。
yt-dlp.exeを最新に更新する方法
VRChatの動画プレーヤーは、YouTubeなどの動画サイトから情報を取得するために「yt-dlp.exe」という外部ツールを利用しています。これは、かつて使われていた「youtube-dl.exe」の後継となる、より高機能なプログラムです。
動画サイト側の仕様変更に対応するため、このツールは頻繁に更新されており、バージョンが古いと動画の再生に失敗することがあります。
本来、yt-dlp.exeはVRChatのアップデートに伴って自動で更新されるため、ユーザーが手動で操作する必要は基本的にありません。しかし、何らかの理由で更新がうまくいかなかったり、ファイルが破損したりすると、再生トラブルの原因になり得ます。
手動でのファイル置き換えは予期せぬ問題を引き起こす可能性があるため推奨されませんが、もし問題が解決しない場合の最終手段として、公式サイトから最新版のyt-dlp.exeをダウンロードし、上記の場所にある同名ファイルと置き換えることで改善するケースも報告されています。
①https://github.com/yt-dlp/yt-dlpのサイトへアクセスして、Releaseから「yt-dlp.exe」の最新バージョンをクリックします。
②その中にある「yt-dlp.exe」をクリックしてダウンロードします。
③元のyt-dlp.exeが格納されている場所は、通常以下のパスにあるので、ダウンロードした「yt-dlp.exe」を上書きすれば更新完了です。
C:\Users\(あなたのユーザー名)\AppData\LocalLow\VRChat\VRChat\Tools
ただし、この操作は自己責任で行う必要があります。まずはSteamの「ゲームファイルの整合性を確認」機能を試すなど、より安全な方法から実行することをお勧めします。
ゲーム内からキャッシュクリアしよう
VRChatを長時間プレイしていると、訪れたワールドや表示したアバターのデータがキャッシュとしてPC内に蓄積されていきます。
これらのキャッシュデータが破損したり、古くなったりすると、動画の再生を含め、ゲーム全体の動作に悪影響を及ぼすことがあります。そのため、定期的なキャッシュのクリアは、多くのトラブルを解決する有効な手段です。
キャッシュのクリアは、ゲーム内の設定画面から簡単に行えます。
推奨されるキャッシュクリア
デバッグ情報の保存されたキャッシュデータの一番上にある「コンテンツのキャッシュを削除」を選択し、確認画面で「YES」を押します。これが最も基本的なキャッシュクリアで、ワールドやアバターのデータを削除します。
この操作によって、あなたのアバターやフレンド情報、アップロードしたコンテンツが消えることは一切ありませんので、安心して実行できます。
その他のキャッシュ
もし基本的なキャッシュクリアで問題が解決しない場合は、同じ画面にある「ローカルアバターを削除」や「テクスチャのキャッシュを削除」も試す価値があります。
これらはゲーム内の設定やローカルに保存されたアバターのキャッシュを削除しますが、前述の通り、サーバー上に保存されているデータが消えるわけではありません。多くの再生エラーは、まず「コンテンツのキャッシュを削除」を実行することで改善されることが多いです。
VRChatで動画が再生されないIPv6問題の解決策
- 原因はクライアント側にあることが多い
- YouTubeがIPv6アドレスでbotを特定
- 対策①:PCのIPv6を無効にする
- 対策②:yt-dlpにクッキーを食わせる
- 対策③:IPv6を残しつつIPv4を優先
原因はクライアント側にあることが多い
基本的な確認事項を試しても動画が再生されない場合、より根深い問題が潜んでいる可能性があります。特に最近多発しているのは、ネットワーク環境に起因するトラブルです。
重要なのは、この問題がVRChatのサーバーやワールドの不具合ではなく、ユーザー一人ひとりのPC環境、すなわちクライアント側に原因があるケースがほとんどだという点です。
「昨日まで見れていたのに突然再生できなくなった」「特定のフレンドだけが見れていない」といった状況は、この典型例と言えます。
つまり、ワールドの製作者やVRChatの運営に問題があるわけではなく、あなたのPCからYouTubeなどの動画サイトへの接続方法に何らかの変化が生じたと考えられます。
この問題の核心には、インターネットの接続方式である「IPv6」が深く関わっています。そのため、解決策もネットワーク設定の変更が中心となり、これまで試してきたゲーム内設定の変更などとはアプローチが異なります。
次の項目から、なぜIPv6が問題を引き起こすのか、その具体的な仕組みと対策を詳しく見ていきましょう。
YouTubeがIPv6アドレスでbotを特定
VRChatでYouTube動画が再生できなくなる問題の多くは、YouTube側のbot対策が原因です。
近年、再生回数を不正に水増しして広告収入を得ようとするbot(自動化プログラム)が増加しており、YouTubeはその対策を強化しています。その一環として、botの疑いがあるアクセス元からの接続をブロックする仕組みが導入されました。
このbot判定に、インターネットの接続方式である「IPv6」アドレスが利用されています。IPv6は非常に多くのIPアドレスを割り当てられるため、個々のデバイスに固有のアドレスが振られることが多く、botの特定に使われやすい側面があります。
YouTubeは、botの活動が検知されたIPv6アドレスの範囲をまとめてブロックすることがあり、正規のユーザーであるVRChatプレイヤーが、この広範囲のブロックに意図せず巻き込まれてしまうのです。
VRChatの動画プレーヤー(yt-dlp)は、ログインせずに動画情報へアクセスするため、YouTube側からはbotによるアクセスと誤認されやすい傾向があります。
この結果、あなたのIPv6アドレスがブロック対象の範囲に含まれていると「botではないことを証明するためにログインしてください」というエラーが発生し、動画が再生できなくなります。
対策①:PCのIPv6を無効にする
YouTubeからのアクセスブロックを回避する最も直接的で簡単な方法は、問題の原因となっているIPv6での通信をPC全体で無効にしてしまうことです。これにより、PCからの通信はすべて旧来のIPv4方式で行われるようになり、IPv6アドレスを対象としたブロックの影響を受けなくなります。
VRChat でYoutube見れない問題
原因はIPv6 接続してるとなるらしいので無効化する方法
コントロールパネル>ネットワークとインターネット>ネットワークと共有センター→接続: [イーサネット]を開く→イーサネット状態の[プロパティ]→インターネットプロトコルバージョン6のチェック外す pic.twitter.com/LHhuHYkdOg— ずんだ もちな🍀VRC (@zunda_miyuki) March 1, 2025
①Windowsのマークを右クリックして「ネットワーク接続」を開きます。
②「ネットワークの詳細設定」を選択します。
③「イーサネット」を選択して、その他のアダプターオプションの編集を開きます。
④一覧の中から「インターネット プロトコル バージョン6 (TCP/IPv6)」を見つけ、そのチェックを外し「OK」をクリックします。

私もこの方法で症状が改善しました! 真っ先に試したい方法です。
メリットとデメリット
この方法の最大のメリットは、手順が簡単で、多くの環境で即座に動画再生問題が解決する点です。
一方で、デメリットも存在します。PC上のすべてのアプリケーションでIPv6通信が利用できなくなるため、IPv6接続を前提としたサービスや、IPv4が混雑している回線(フレッツ系など)では通信速度が低下する可能性があります。
また、Windowsの一部の機能(ファイル共有の検索など)が正常に動作しなくなる場合もあるため、あくまで一時的な回避策、あるいは他の方法がうまくいかない場合の最終手段と考えるのが良いでしょう。
対策②:yt-dlpにクッキーを食わせる
IPv6を無効にする方法がPC全体に影響を及ぼすのに対し、より限定的なアプローチとして、VRChatが利用するyt-dlpにYouTubeのログイン情報を認識させる方法があります。
これは、ブラウザから取得した自身のログイン情報(クッキー)をyt-dlpに読み込ませることで、「ログイン済みの正規ユーザー」としてアクセスさせ、bot判定を回避する手法です。
この方法は、YouTube側から「ログインしてください」と要求されているエラーメッセージに直接応える形となり、ネットワーク設定を変更する必要がないのが利点です。ただし、設定には専門的な知識が必要で、手順もやや複雑になります。
具体的な手順としては、ブラウザの拡張機能などを使ってYouTubeのクッキー情報をファイルとしてエクスポートし、そのファイルをyt-dlpの特定のフォルダに設定ファイル(yt-dlp.conf)を作成して読み込ませる、といった流れになります。
しかし、この方法はクッキーの有効期限が切れると再設定が必要になるほか、VRChatのアップデートで設定がリセットされる可能性もあります。また、すべての環境で成功するとは限らず、設定がうまくいかないケースも報告されているため、上級者向けの対策と言えます。
対策③:IPv6を残しつつIPv4を優先
PC全体のIPv6を無効にするデメリットを避けつつ、YouTubeのbot判定を回避する最もバランスの取れた方法が、特定の通信だけをIPv4で行うように設定することです。
Windowsのファイアウォール機能やポリシー設定を利用して、YouTubeが使用する特定のIPv6アドレス範囲への通信をブロックし、結果的にIPv4での接続を強制させます。
この方法であれば、VRChatでの動画視聴時のみIPv4接続が使われ、それ以外の通信では高速なIPv6のメリットを維持できます。設定にはコマンドプロンプトの操作が必要ですが、一度設定してしまえば恒久的な対策となり得ます。
ファイアウォールで特定のIPv6範囲をブロックする
代表的な方法として、コマンドプロンプトを管理者権限で開き、以下のコマンドを実行してファイアウォールの送信ルールを追加します。
netsh advfirewall firewall add rule name="Block YouTube IPv6" dir=out action=block remoteip=2404:6800:4000::/36
このコマンドは、YouTubeが使用しているとされるIPv6アドレスブロック 2404:6800:4000::/36
への送信をブロックするルールを追加します。これにより、yt-dlpがこの範囲のアドレスに接続しようとしても失敗し、代替手段としてIPv4での接続を試みるようになります。
この対策は、PC全体の設定を変更するよりも影響範囲が限定的で、多くのユーザーにとって最適な解決策となり得ます。ただし、YouTube側が使用するIPアドレス範囲を変更した場合は、ルールの更新が必要になる可能性も念頭に置いておく必要があります。
VRChatで動画が再生されない時の総まとめ
この記事では、VRChatで動画が再生されない問題について、基本的な確認事項からネットワークに起因する根深い原因、そして具体的な解決策までを解説しました。問題解決のポイントを以下にまとめます。
- まずゲーム内の「Allow Untrusted URLs」設定を確認する
- OSやグラフィックドライバは常に最新の状態に保つ
- 競合する可能性のあるVPNソフト等はアンインストールを検討する
- NVIDIAコントロールパネルの設定を「復元」で初期化してみる
- ゲーム内のキャッシュクリアは有効なトラブルシューティング手段
- 問題の多くはVRChat側ではなくユーザーのPC環境に起因する
- YouTubeのbot対策が再生エラーの主な原因
- bot判定はユーザーのIPv6アドレスに対して行われる
- 対策の基本はIPv6によるYouTubeへの接続を回避すること
- 最も簡単な対策はPC全体のIPv6を無効化すること
- IPv6無効化は通信速度低下などのデメリットを伴う場合がある
- 上級者向け対策としてyt-dlpにクッキーを認識させる方法もある
- 最も推奨されるのはファイアウォールでIPv4接続を優先させる方法
- コマンド実行で特定のIPv6アドレス範囲への通信をブロックする
- これにより他の通信ではIPv6のメリットを維持できる